佐藤多佳子 『しゃべれども しゃべれども』

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

「しゃべりのプロだろ、教えてよ…あがり症の従弟や口下手の美女から頼られて、話し方教室を開くハメになった若い落語家の三つ葉。苛めにあった小学生や赤面症の野球解説者までが通ってきて…。正直な人たちの胸キュン恋愛小説」といった内容。灰―Book―のハシモトさんがベタ褒めしていたので、古本屋で見つけて買ってきたんだけど、ホントに期待を裏切らない内容だったので驚き。

主人公が噺家ということも勿論あるのだろうが、全体を通して文章に凛としたものがあるというか、一本のしっかりとした筋のようなものが感じられて、読んでいてとても心地が良い。覚えたての噺を嬉しそうに話す村林、「一期一会」の一門会、村林と十河の落語お披露目会、そしてもうこれ以上はどうしようもないってぐらいのハッピーエンドを提供してくれるラスト、読んでいて良い気持ちになれる場面がたくさんある。正直言って何度ウルっとしてしまったか分からない。

三つ葉を初めとした登場人物も、揃いも揃って素敵なやつばかり。特に十河はなんだありゃ。これにキュンとしない人のほうがおかしいに決まってる。そうか。これが俗に言う「ツンデレ」か…。ハッキリ言ってこれは反則だ。でも、好きだ。