貴志祐介「硝子のハンマー」

硝子のハンマー

硝子のハンマー

映画「青の炎」を見たあとに、その原作を読んだ俺を久しぶりに読書の世界へ引き戻してくれた貴志祐介の新作。なんと「青の炎」以来4年半ぶりの作品です。今回は「青の炎」とは打って変わって、本格ミステリーど真ん中。
オフィスビルの最上階に位置する社長室という密室で起きた事件のトリックは一体何なのか?暗証番号付きのエレベーターや監視カメラの網を犯人はどうやって突破したのか?その謎に防犯コンサルトの榎本径と、弁護士の青砥純子の二人が迫るといった感じの内容です。そして、後半では犯人の生い立ちが語られ、トリックの全貌が書かれています。

うーん。面白いと言えば面白いんだけど、ちょっと本格すぎたかなぁ。トリックに挑んでは敗れ、挑んでは破れの展開は結構ハラハラできて面白いし、読むだけで防犯の勉強になってしまうぐらいの情報量もスゴイ。物凄い細かく調べられていることが伝わってきます。

でも、あくまでトリックは何なんだ!というのがメインだからこれといったストーリーはないし、後半の犯人生い立ちは、ちょっと「火車」と「白夜行」を彷彿とさせるし……。トリックも「これはすごすぎる!」というものではなく、意外と地味だったかと。いや、解けなかったですけどね……。まぁ自分はいつもトリックなんて考えないでただひたすら読むだけから。アハハ。

というわけで、もっと違う路線でいったほうが面白い作品ができそうなのに!と感じました。個人的には「青の炎」の方が好きというか、俺はこれが大好きすぎます。本格好きの人には「硝子のハンマー」をオススメします。