列車に乗った男

列車に乗った男 [DVD]

列車に乗った男 [DVD]

「愛の奥深さや人生の本質を、一風変わったストーリーで追求するパトリス・ルコント監督。その個性が最大限に発揮された秀作。銀行強盗を目論んだ中年男が、列車に乗って小さな町の駅に降り立つ。泊まる場所に困った彼は、元教授がひとりで暮らす屋敷に身を寄せる。男の計画を知った元教授は、その決行日が自分の手術と同じ日であると知り、ふたりには奇妙な友情を育まれる」という内容。

とても渋い映画を見てしまったような気がします。まず主演の俳優の顔からしてすでに渋い。俺に特殊メイクとか施してもこんなに味わい深い顔には絶対ならないよなぁ。スゴイ。フランス偉大。元フランス語教授であるマネスキエの家の家具とかを見るだけで、あぁーなんか洒落てていいなぁ、などとしがない俺は思ったりするのだが、映画の中でマネスキエが「日本式の家具を揃えようと思っていたんだが」と語っていたように、フランス人から見れば日本の生活にもたくさんうらやましいところがあったりするのかもしれません。

で、映画の中で出会う二人も、お互いにないものねだり。年を取ることに恐怖を覚え、退屈な人生にも飽き飽きしたマネスキエは強盗に憧れ、強盗のミランはしがれた町で穏やかに暮らす元・教授の生活に憧れる。憧れたあげく床屋に行き、「アゴヒゲも生やそうかな」と言いつつミランと同じような髪型にしてくるマネスキエ。そして、もういっぽうのミランはマネスキエに憧れてアゴヒゲを剃って口ヒゲだけにしてしまうっていう場面はちょっと和みました。内容は全然関係ないけど、夫のために美しい髪を切ってお金を作ったら、夫は妻のためにかんざしを買ってきたみたいな日本の昔話を思い出してしまいました。

一番印象に残ったのは「二人相手にケンカで勝てるのは、映画の中だけだ」って言って、老いについて話す場面ですね。そのあと、自分の生活を変えようとして勇気を振り絞りヤンキーに注意したら、皮肉にも昔の生徒だったっていう場面と合わせて、ちょっと切なかった。ラストは唐突に、それも残酷に終わってしまうんだけど、年を取ってから見れば、もっと深く感じることができるのかもしれない。とりあえず、ビールとかワインを美味いと思えるように努力します!