解夏
- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2004/07/30
- メディア: DVD
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ベーチェット病によってすでに視力を失った人は、この病気で一瞬にして失明した人もいるし、10年間かけて徐々に視力を失った人もいると語る。そして、聖福寺で出会った林老人は「辛く、悲しい行ですなぁ」、「失明した瞬間に恐怖から解放される。その瞬間があなたの解夏なのだ」と語る。要は、解夏とは人生そのもののことを言っているのだろう。明日になったら終わってしまうのか、もしくはずっとずっと先に終わるのか。そんなことは誰にも分からないし、人それぞれによって全然違う。そして、終わったときにようやく死の恐怖から解放されるわけだ。もちろん本来解夏は修行僧に関する仏教用語なんだけども、俺はそう思う。
まっさんファンとして原作も読んだのだが、表題の『解夏』自体は短編なのであっさりとしている。でも、映画化するにはこれぐらい薄味なほうが良いのかなと思う。現に小説を再現できていないと感じる部分はほとんどない。ただ、ラストはちょっと説明が足りなかったかも。小説では、目が見えなくとも百日紅の白い花がしっかりと見え、それに続いて「故郷の風景が自分に刻まれた、と気づいた」って書いてあるから、光を失う前に隆之は大切なものを見ておけたって分かるのだけども、映画では少し分かりにくい気がする。
この映画は感動!感動!という感じではなく、比較的淡々とした手触りで失明するまでの様子が描かれている。生徒たちのメッセージに対して、どうしようもすることのできない隆之が泣き崩れる場面はとても印象に残っていて、その反面、画面に映し出される長崎の街はとてもキラキラしていて、ただただ綺麗だった。