森博嗣 『スカイ・クロラ』

スカイ・クロラ

スカイ・クロラ

俺が読んだのは文庫版ですが、表紙がカッコイイので単行本のほうを貼っておきます。なんでもこの装丁は鈴木成一という有名な方の作品らしく、他にも重松清「疾走」とか東野圭吾白夜行」などもこの人の作品だそうです。この空の写真は素敵ですねぇ。そういや、「疾走」の感想早く書かないとな…。今友達に貸してるので、返ってきたらたぶん書きます。

さて、森博嗣と言えば『すべてがFになる』と『冷たい密室と博士たち』の二冊を読んだだけで俺が挫折した作家なわけですが、この作品は密室の「み」の字も出てこない作品だとid:mixcaさんの感想から知り、早速読んでみましたよ。章の始めごとにサリンジャーの文を引用していたり、文体が村上春樹っぽかったり(読んだことないけど)、読み始めで受けた印象はかなり微妙だったんだけど、読み終わるころには作品の世界観の虜に…。

この作品は西暦が何年だとか、場所がどこだとか、そういった舞台設定がほとんど出てこなくて、永遠に生き続けるという"キルドレ"である主人公の記憶と同じようにとても曖昧で抽象的な手触りがします。そして、とても淡々としています。主人公は戦闘機に乗って敵と戦っているわけなんだけど、別に戦争がどうだとかそんな内容ではないです。生きるだとか、死ぬだとか、そういうお馴染みのことがテーマ。だから、まぁアレだ。俺が大好きな感じのテーマですよ。

で、そのことについて主人公が思考を巡らしている場面の文章は、ともすればただ言葉をこねくり回して悦に入っているだけと思われてしまうかもしれないけど、俺はこういうのはとても好きだったりします。読んだだけで自分が少し賢くなったと勘違いできるし(笑。それに読んでいて単純に心地良かったし、まるで詩のようでとても綺麗でした。そう、この作品には素敵だとか綺麗だとか、そういう単語がとても似合う作品だと思います。

そんなわけで、続編のナ・バ・テアも読んでみたくなりました。今度買おう。