北村薫 『ターン』

ターン (新潮文庫)

ターン (新潮文庫)

内容を簡単に説明すると、自称「よく転ぶんです」なドジっ子主人公・森真希が、ダンプに衝突して気が付くと同じ時の流れの中を抜け出させなくなってしまったというような話。いきなり地の文に二人称が登場して、いやいやお前誰だよとか思ってちょっと読みにくかったんだけど、電話が鳴ってからは一気に読めました。

文体はとてもアッサリとした感じです。途中、そんな妄想の典型みたいな展開でいいのかと突っ込みたくなるところもありましたが、基より設定が非日常的なものですので「このあと一体どうなるんだろう」と単純にワクワクしながら読める作品でした。人が誰もいない街なんてものには、小さい頃ドラえもんを見ながらよく憧れたもんです。無人のスーパーマーケットとか想像しただけで楽しいだろ?

この作品の素晴らしいところは、毎日同じことの繰り返しでウンザリしてしまうことがあるような日常の生活を全く時が進まない世界での生活に例え、どんなに無限に思えようとも時には限りがあり、そして限りがあるからこそ一瞬が輝くのだということを端的に伝えてくれるところです。まぁ俺はまだそんなポジティブに考えられないけどな!いつかはこう思えるものなんですかね。

というわけで、そんな感じで時のありがたみを教えてくれる小説です。これは「時と人」というシリーズものらしくて、他にも「スキップ」「リセット」の二作品もあるらしいので、今度是非読みたいと思います。どういうわけか、俺が読むのは「時」とか「死」とか「人生」とかそんなのばっかだな。