伊坂幸太郎 『死神の精度』

死神の精度

死神の精度

伊坂幸太郎、待望の新作。内容を簡単に説明すると、ミュージックが大好きで、仕事に関して妙に真面目で、クールだけどそれでいてちょっと間の抜けたところもある死神、千葉が出会った死にまつわる六つの物語といった感じです。

いやーホントこの人は期待を裏切らないですね。すごく面白くて、買ったばかりだというのに一瞬で読み終わってしまいました。もっとゆっくり読めば良かった…。良い感じで進んでたのにサラっと話が終わっちゃったりしたから、最初は「アレ?こんなもんなのかな?」って思ってたんだけど、後半の三篇で一気に良くなるので途中で投げ出したりはしないほうが得策です。後半はゲストも出てくるしね!

読みながら、主人公が絶対に物怖じしないというのはとても安心感があるなぁなんて思った。なんというか、コイツならなんとかしてくれる、みたいな。「吹雪に死神」みたいな話の場合、普通だったら読者はドキドキしながら話の続きが気になるわけだけど、今回は全体に渡って死神の視点から劇を舞台裏から見ているようなもんだからね。お決まりのミステリをパロったような感じで面白い。あと、関係ないけど、千葉がニンジン食べる場面では思わず笑ってしまいました。

あとはまぁ相変わらず重い話を爽やかに書くなぁ、と感心するしかないですね。自分が死ぬなんて普段は思ってもみなくても、「死」はずっと身近にあって、全然特別なものじゃない。だからこの六つの物語みたいに日常の隙間から突然死がやって来るわけで、あぁーなんかもう嫌だなぁって途中ちょっと悲しくなったりもするんだけど、読み終わったあとには「こんな風に年を取るのも悪くないかも」とほんの少しだけ笑顔になれる。そんな小説です。

最後は油断してたからホントやられた。あれはズルイ。