伊坂幸太郎「グラスホッパー」

グラスホッパー

グラスホッパー

「復讐。功名心。過去の清算。それぞれの思いを抱え、男たちは走る。3人の思いが交錯したとき、運命は大きく動き始める…。クールでファニーな殺し屋たちが奏でる狂想曲。書き下ろし長編」といった内容。

いやーやっぱ面白いなぁ。スゴイ好きですこの人の小説。今回もゴダールだとかドストエフスキーだとかジャック・クリスピンとかいった、著名人の名言や作品などからの引用がたくさん出てくるんですが、大体のセリフがそこまでキザな言い回しにはなっていないのもいいと思います。これぐらいが一番ちょうどいいんじゃないですかね。ちなみに、ジャック・クリスピンってのは架空の人物らしいです。

三人それぞれのエピソードがあって、最後にそれらが交わっていくという感じは「ラッシュライフ」に少し似ていますね。ストーリーとしてはそれほど変わったところはありません。ニヤリとするような伏線の解消は少しあるけれど、最後に物凄いどんでん返しがあるってわけでもないです。それなのにここまで面白いのはやっぱ登場人物の個性が強いのと、セリフのひとつひとつが凝っているからってのが大きいのかなぁ。これ言ったらちょっと賢く見えるんじゃない?と言った感じで、思わず友達とかに言いたくなるようなセリフが満載。交通事故とテロの話とかすげー発想だなぁって思ったもん。バッタの話とかも。

まぁ実際口にしたらちょっと変だと思いますけどね。たぶんそいうところが苦手だって人もいるかもしれないです。こんなこと言う奴はいない、全然リアリティがない、とか。たぶんブランキーの歌詞を「なにこれ。意味わかんないじゃん」と思う人には向いてない気がする(笑。ときどき出てきた鈴木の奥さんのセリフにちょっとウルッときたのがあったなぁ。将来子供ができたら、夫のネクタイを直させる係りやらせようとかいうやつ。なんでこれにウルッときたかは自分でもよくわからん。で、自分が一番ほぇーと思ったセリフはこれ。

「人は本当に死ぬまでは、自分が死ぬとは信じないからだ」

テストの時期が近づいてもなんとかなるだろうと思って勉強しない。北海道に旅行に行くことになっても、現地に着くまでは「そんなに寒くないだろ」と思ってるようなもんか。そうなんだろうなぁ。俺なんて死にたくない死にたくないとか言ってるけど、自分が死ぬとか全然思ってないからね。明日明後日未来永劫に当たり前のように生きていると信じてやみません。まぁ信じないとやってられないか。だって

「生まれた時から、死ぬのが決まってるというのがすでに酷いんだから」