YOSHII LOVINSON 『WHITE ROOM』

WHITE ROOM

WHITE ROOM

試行錯誤の上、やっと作り出した前作から1年ぶりとなる2ndアルバムである。一曲目の「PHOENIX」のイントロが流れ出した時点で受ける印象は1stのそれとは全く違っており、今回は全編に渡ってアートワークから感じられるものと同じようなアメリカの乾いた風が吹き抜けており、とても力強いアルバムに仕上がっている。

だが作ったのは言うまでもなく吉井なわけで、メロディや声はもちろん吉井節そのものである。前作は昔ながらの手法であるハナモゲで作った歌詞もあったそうだが、「キレイな空気が吸いたかった」と語り、少し前に結構な田舎に引っ越したらしい吉井は今回のアルバムで「欲望などいらないよ」「何回でも生まれかわれる」「貫け自己流」など、とてもまっすぐなメッセージをこちら側に伝えてくる。

中でも「JUST A LITTLE DAY」の出来が秀逸だ。吉井はイエローモンキー時代のライブでは、よく歌詞を変えたりメロディを変えたりということをやっていたが、この曲の二回目のAメロのちょっとした変え方がたまらなく自分は好きで、聴いているだけでアドレナリンが出てしまいそうになる。しかも、そのあとのCメロが言葉では表すことができないほど良いのである。毎日切ない切ないと繰り返し思って生きている俺は、どうしようもないほどツボである歌詞とあいまって涙ぐんでしまったほどだ。そして、そのあと涙ぐんでいる俺に「悲しみを拭い去れ」という歌詞をぶつけてくる吉井には参ったとしか言いようがない。

そして聴いていると何故かイエローモンキーの「峠」が思い浮かんでくる「WHAT TIME」である。「俺らのカレンダーあと何冊だい?」という歌詞にもドキッとさせられたが、とにかく声に痺れる。fra-foa三上ちさこが以前雑誌で「トム・ヨークの口からは光の柱みたいなものが出てる」と言っていたが、吉井は声自体から何かが染み出してきているような印象すら受ける。

吉井は「CALL MEを新しい人たちに聞いてもらえたことが嬉しかった」と最近のインタビューでよく口にしていて、確かにあの声は老若男女誰にでも届く声であるはずだと俺は勝手に思っている。現に俺がシロップを聴いていても「お経みたいな歌ね」などの罵詈雑言しか口にしない親が、イエローモンキー含め吉井だけは毎回と言っていいほど褒めるのである。

そして、吉井本人も「大自然の中で暮らしてるおじいさんが聴いて『いい詞だなぁ』と思う詩が書きたい」、さらには「今回はアメリカモードだったけど、次は日本に目を向けたい」というようなことまで言っている。吉井の原点みたいなものには日本の歌謡曲というものがとても大きく絡んでいて、それが魅力の大きなひとつにもなっていると俺は思う。おじいさん、おばあさんにまで幅広く伝えたいという吉井の考える新しいロックと、いわゆる「SICKSモード」が重なり合ったときに一体どんなアルバムが生まれるのか。今から楽しみで仕方がない。