奥田英朗 『邪魔』

邪魔(上) (講談社文庫)

邪魔(上) (講談社文庫)

邪魔(下) (講談社文庫)

邪魔(下) (講談社文庫)

内容を簡単に説明すると、平凡に暮らしている主婦・及川恭子と、ちょっとワルな高校生・渡辺裕輔と、妻を亡くした刑事・九野薫の日常が放火事件をキッカケに交差するといった感じ。これはホント面白くて、今日なんて日は一日中読みふけってしまいました。上下巻をこんなにも早く読み終わったのは初めてです。

ありふれた日常が不穏なものに変わっていく過程のジワジワが感がとても怖く、そしてまた素晴らしいです。陳腐な表現ですけど、ページを捲る手が止まらなくなります。前半の恭子の日常あたりは、なんの変哲も無い日常を幸せなこととして描くといった感じではなくて、むしろ「あぁ人生こんなもんなのかなぁ」という意味での切なさがあるような気がしたんだけど、最後は一周回って、不安のまるでない日常というものが愛しいものとして描かれているのがなんかいいなぁ、と。

後半になるにつれてどんどん恭子が暴走していって、口調がなんだか下町の粋なおばさんみたいになっていくのはちょっと笑えます。個人的にはヤクザが出てくると、どことなくB級感を覚えてしまうんですよね。佐伯の「おぬし」っていう言い方もどうなんだろうかと思ったりもして、他にもところどころいかにも小説だと思える箇所や、ベタベタな展開もあったりするんだけど、まぁ仕方が無いか。これといった事件やドンデン返しがあるわけでもなく、こんなにもハラハラと読ませてくれるってのは単純にスゴイですしね。それだけで充分オススメできます。

そんな感じで面白かったです。このあとに「空中ブランコ」とか読むとかなりギャップがありそうだな。「最悪」もまだ読んでないので、今度読みたいと思います。