東野圭吾 『容疑者Xの献身』

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

「天才数学者でありながら冴えない高校教師に甘んじる石神は、愛した女を守るために完全犯罪を目論む。石神の友人である物理学者の湯川は果たして真実に迫れるか」といった内容。評判が良かったので、期待して読んだんだが…

泣いた。久しぶりに東野で泣いた。途中まではなんてことはないミステリーって感じなんだけど、ラストで一気に俺の涙腺をこじ開けてきやがった。相変わらず推理などを一切しない俺はトリックにも普通に騙されました。そして、このトリックがまたラストの切なさに拍車をかけるわけですよ。っつーかそれが核だな。

このトリックを実行するにまで至った石神の想いの強さが伝わってくる文章がこれでもかってぐらい連続して出てくるから困った。そりゃ「崇高なるものには、関われるだけでも幸せなのだ」なんて簡単に割り切れるはずないわ。だからこその嫉妬だったろうと思うし。俺だってそんなに打たれ強くないよ!

「人は時に、健気に生きているだけで、誰かを救っていることがある」

こんな一文が最後のほうに出てくるんだけど、これがスゴイ好きだ。そんなことがあるのなら素敵な気がする。悲しいけど、少しだけ良い気分になれた。