東野圭吾 『時生』

時生 (講談社文庫)

時生 (講談社文庫)

不治の病を患う宮本拓実の息子・時生は、その昔父親がどうしようもない若者だったころに時を越えて会いに来ていた、という少しSFチックな内容。これも結構評判が良かったから期待してたんだけども、まぁ普通かなっていう程度でした。

時空を越えてやって来た息子っていうこのSFチックな設定を大して生かしもせず、ほとんど置き去りにしたままストーリーが進んでいくのがすごくもったいないと思う。しかも、恋人が事件に巻き込まれて、その彼女を助けに行くというB級ハードボイルドみたいな話が主軸だってところが微妙。そのうえ、主人公の拓実は人に対して素直になれないというベタにも程があるキャラで、読んでいるとそのあまりの卑屈具合に「素直になれや!」と少しイラッとしてしまいました。

まぁそれでもラスト付近では多少グッとくるし、最後までそこそこ面白く読めちゃうんだけどね。それが東野の良いところであり、悪いところでもある。