奥田英朗 『空中ブランコ』

空中ブランコ

空中ブランコ

「人間不信のサーカス団員、尖端恐怖症のやくざ、ノーコン病の野球選手……。彼らが困った末に病院を訪ねると、そこにはとんでも精神科医・伊良部が!」といった内容。子供みたいな伊良部と患者たちの短編が五話収録されています。

サラっと読めて、クスっと笑える作品って感じでしたが、思ってたよりは笑えなかったなぁ。いや、まぁ面白いんだけど、それぞれのエピソードが終わったあと、つまり患者たちが伊良部の治療なのか何なのかよく分からないものによってスッキリしたあとの描写がすごく爽やかで、どちらかというとそういう部分の方が個人的には良かったです。「女流作家」のラスト、ベタだけどウルっときてしまった。

あと「ホットコーナー」のコントロールの話は、ホントにそうかもなぁって思った。「人間だけの、不思議な学習能力なのだ」だとか、この辺りスゴイ好きです。意外と深いのかもと思わせられる。まぁこれで直木賞…?って気がしないと言えば嘘になるけど、充分楽しめる作品ではありました。ごちそうさまです。