重松清 『きみの友だち』

きみの友だち

きみの友だち

ふつうに友だちもいた小学五年生の恵美ちゃんは、ある雨の日に交通事故に遭い、松葉杖なしでは歩けなくなった…。八人の「きみ」にまつわる物語から「友だちという関係」を描く連作短編集。相変わらず良い小説書いてくれるよな、オイ!

この「それはそれでアリ」や「わかってない」という表現の仕方が重松の王道を行く王道なので、とても良かった。何も考えずに安心して読める作品です。山崎洋一郎風に言えば、刺激的とは言わないまでも、老舗ブランドの新作セーターのようにきちっとした新鮮さで読めるのだ。このクオリティを保てるってスゴイ。

普通なら脇役として切り捨てられてしまう登場人物についても、丹念にそれぞれのエピソードを描くことによって、どんな人物にもそれぞれの物語があることを改めて思い出させてくれるのも良い。普段生活していると忘れがちだが、見たこともない家にだって人は住んでいるし、行った事のないのない国にもたくさんの人が暮らしているように、誰だって「自分」なのだ。そこら中が主人公だらけ。俺はたまにこういうことを考えると、何か果てしないものを感じたりします。

それはさておき、連作短編集なので色々なことが最後には繋がったりするわけで、なんというか、やはりこういうオールスター大登場みたいなのはズルイ。ズルイとは思いつつも、感動してしまう。人よっては「友達」だとか、こういうのってわざらとしい題材だと感じるのかもしれないけど、これをここまで嫌味なく書けるのは素直にスゴイ。是非読んでほしいです。たぶん優しい気持ちになれる。