重松清 『小さき者へ』

小さき者へ (新潮文庫)

小さき者へ (新潮文庫)

脱サラに失敗した父親。少年野球の監督を務める、本当は娘ではなくて息子が欲しかった父親。など計六つの短編がいつもの重松節で描かれています。

筆者の小説に登場する子どもには、ときたまちょっとしたわざらしさというか、そういったものが感じられるときがあって、今作品はそれが少し顕著だった気がします。重松節すぎて多少クサイ感じが……。人間のきったない部分も少な目。「団旗はためくもとに」の中で、「応援って役に立たないけど、一生懸命じゃないあんたは応援すらしてもらえないわね」みたいなことを母親が言う場面は良かった。

人間は「グラウンドで試合する人と、スタンドからそれを見てるひと」の二種類だけど、最後の「三月行進曲」みたいにスタンドの中で仲直りがあったり、勇気を出して打ちうける子もいたりで色々あって、グラウンドはグラウンドで、そこにいるチームで負けないのは一つだけだし、まぁ結局はどっちも一緒なのかもね、というか、一人一人はみんなグラウンドに立つもので、周りには絶対スタンドから見ていてくれる人がいる、みたいなことか。たぶんそんな感じ。