大崎善生 『パイロットフィッシュ』

パイロットフィッシュ (角川文庫)

パイロットフィッシュ (角川文庫)

内容の大半は、熱帯魚が泳いでいる水槽を眺めながら主人公がなんだかんだと考え事をしているだけで、ストーリー自体は別に大してもんではない。 村上春樹チックなうえに(本が好きだとのたまいつつ春樹を一冊も読んだことのない俺にはいまいち分からないが)いかにもオシャレな雰囲気ありありなので、色々と鼻につくところが多いかもしれないが、文章はとてもキレイで良かった。

人間は記憶の集合体だというような表現が何回も出てきて、それが出てくるたびに宮部みゆき『理由』の『人を人として存在させているのは「過去」なのだ……それを切り捨てた人間は、ほとんど影と同じなのだ』というセリフを思い出した。

なにが偉くてなにが幸せだとかは確かにものすごく曖昧で、結局存在しないんじゃないかと最近感じているのだが、でもまぁそんなことをグチグチと考えて、暇で余裕のある生活をしていられる自分はものすごく幸せなのだろうなとも思う。

余談だが、傘の自由化は実現したらとても面白い気がする。