貴志祐介 『新世界より』

新世界より (上)

新世界より (上)

新世界より (下)

新世界より (下)

子どもが魔法を使って大冒険!そんな話。あんまりカテゴリーで括って語ってしまうとバカを見るけれども、あえてすごく言いたいのは、貴志祐介は男……というか「男の子」の好きそうなツボを心得てるよなぁと。それをすごく感じる作品です。

その昔、ドラえもんの映画にて、鏡の世界にあるスーパーで皆が自由に買い物をして空き地でBBQをやるっていう場面があったけど、ドラえもんにはそういう子供心を揺さぶる魅力に溢れていたなぁと今改めて思ったりします。ある種そういうものによく似た……たとえば『青の炎』でも主人公の部屋はガレージにあったでしょ?あれもそうだと思うんだ。

そもそも、もっともらしい説明と流れを演出してるけど、あんなエロ描写に必然性は全く無い。たぶん貴志祐介がそれを書きたいだけというか、体験したいだけなんじゃないかという……。だから、偏見たっぷりでいうと、男がこれを面白いっていうのは分かるけど、女性がこの話を面白いと感じるっていうのはなんとなく不思議です。

そして、このページ数を一気に読ませてしまう筆力を考えると、面白かったと言わざるを得ないんだけど……業魔とバケネズミの話で一部二部みたいになっちゃってるわ、後半はほとんどバトル物みたいだわ、ただの貴志祐介が考えた面白生き物お披露目大会が繰り広げられるわでなんだか尻すぼみ。ラストも、勧善懲悪を避けるための、相手が置かれていた立場を突きつけるというまぁ目新しくも無い展開。褒めるべきB級ぐらいだと思います。

やはり俺の中の『青の炎』は越えられません。